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[農業基礎]育苗をする目的とやり方、種類(苗の形式)について

育苗は農業における重要な工程の一つです。

作物の成長において、幼苗期に適切な管理と環境が提供されるかどうかが、収穫量や品質に大きな影響を与えます。

この記事では、育苗の目的、メリット、さらに異なる育苗方法について詳しく説明します。


目次

作物の苗を育てる方法2種

育苗は、一般的に作物の苗を育てるために行われます。

作物の苗を育てる方法には、主に「直播き」「育苗」の二つがあります。

「直播き」

「直播き」とは、畑や圃場に種を直接蒔いてそのまま苗を育てる方法です。

直播き

「直播き」はいくつかのリスクが伴う方法で、種が干ばつや豪雨によって発芽しにくくなることや、鳥害の被害を受ける可能性があります。

また、広い畑で直播きを行う場合、雑草の管理が非常に大変となります。

植える作物が雑草に負けたり、発芽までに生える雑草を除草したりすることは避けたいため作物の多くは育苗し、定植されます。

「育苗」

「育苗」とは、畑や圃場ではなく、別の場所で種から苗を育てる方法です。

育苗では、種を育苗ポットや他の容器にまき、一定の条件下で育てます。これにより、自然の気象条件から植物を保護し、丈夫で健康な苗を作ることが可能となります。

また、苗を購入する場合と比べて、株数が多くなるほどコストが抑えられる、出回っていない品種を育てられるなどのメリットもあります。

育苗の目的

良い苗の育成

環境への耐性が弱く、病害虫の影響を受けやすい生育初期に、より目の届きやすい、適切な環境で管理することで、良質な苗を育てます。

良い苗を定植することで、作物の草勢と着花が安定しやすくなります。

畑(本圃)の有効活用

比較的狭い育苗床でまとめて管理できるため、定植までの期間に本圃を他の作物の栽培や、定植準備に使うことができます。

夏野菜を育てながら秋冬野菜の育苗をしていくなどをして一年のサイクル、設計を考えて作業することで作業効率や経済的な見直しをすることができます。

畑(圃場)で栽培作物を育てながら、別の場所で育苗することで一年の計画を立てることができ、農地の効率的な利用が可能となります。

管理の手間を少なくする

管理の手間を少なくするのが育苗をする理由、1番の目的です。

育苗は直播きよりも管理する面積が狭くてすむため、労力や暖房・被覆資材などのコストが抑えられます。

育苗によって、生育がそろいやすくなったり、収穫期間が延びて作付け回数を増やせたりする利点もあります。

育苗の種類

育苗にはさまざまな方法があります。以下が主要な育苗方法です。

  1. 平床育苗
  2. ポット育苗
  3. セル成型育苗
  4. 二次育苗

[1] 平床育苗

平床育苗は、育苗箱に直接床士を入れて、多数のタネをまんべんなく、あるいはすじ(条)などにして播く方法です。

平床育苗 稲
平床育苗 稲

イネやネギなどの作物に使用されます。

[2]ポット育苗

ポット育苗では、ポリエチレン製などのポットに床士を入れ、1~数株ずつ育苗します。

ポット育苗

広い育苗面積と多くの床士が必要で、労力がかかりますが、特に果菜類の場合、育苗日数を長くとれるため、定植後の管理がしやすいです。

[3]セル成型育苗

セル成型育苗では、セル成型トレイに密植状態で苗を育てます。

セル成型育苗

苗が小さいため、1株当たりの床士量が少なく、育苗や苗の運搬を含めた定植作業の省力化が図れます。ただし、セル間隔が狭いため徒長しやすく、床士量が少ないため肥切れに注意が必要です。

[4]二次育苗

二次育苗は、セル成型苗をポットに鉢上げし、ポット苗のようにして利用する方法です。

二次育苗

特に果菜類などで行われます。


どの育苗方法を選ぶかは、作物や栽培条件によって異なります。土壌の特性や病害虫の有無、作物の特性に合わせて最適な方法を選択することが重要です。


育苗の管理

育苗後は、十分に灌水し、発芽まではやや高めの温度で管理をします。

生育初期の作物は環境適応能力が低いため、適切な光量、水分調整、保温、加温、換気などを提供できる設備を整えることが重要です。

  1. 発芽前の管理
  2. 徒長の防止
  3. 均一になるように管理

[1]発芽前の管理

播種後は、種が発芽するまでの期間に十分な灌水が必要です。

また、発芽を促進するために、適切な温度(一般的には約30°C前後)を維持することが大切です。温度管理が難しい場合、加温設備を利用することが考えられます。

[2]徒長の防止

生育初期の苗は徒長しやすい傾向があります。徒長を防ぐために、適切な間引きを行ったり、加温育苗の場合は温度を下げたりすることが必要です。

過度の伸びを防ぐことで、健康的な苗を育てることができます。

[3]均一になるように管理

特にセルトレイなど小さな容器を用いた育苗では、床士の条件変化が大きいため、全体の発育が均一になるように注意して管理することが重要です。

均一に発芽し成長することで一斉に定植や収穫などの作業を進めることができ、効率的に行うことできます。

植え付け方法

育苗期間が終了し、健康的な苗ができたら、本圃(畑や圃場)に定植する準備が整います。植え付け方法は、作物に応じて異なりますが、以下の一般的なステップが適用されます。

  1. 株間・条間を決定し、植え穴を掘ります。植え穴の大きさは、ちょうご根鉢が収まるくらいの大きさであることが重要です。
  2. 根鉢を傷めないように注意しながら、育てた苗を植え穴に入れます。
  3. 地面を軽く鎮圧して、苗をしっかりと固定します。
  4. 十分に灌水して、特に本圃に根が活着するまで、根圏を乾燥させないよう注意します。
  5. 若干軟弱な苗は風などの影響を受けやすいため、仮支柱を立てて誘引することが有効です。
  6. 気温が低い場合や発根が停滞する状況では、被覆資材を利用して環境を整えることがおすすめです。透明マルチを張るか、トンネルをかけるなどが考えられます。

良い苗とは?

良い苗とは、各作物にとって適切な葉色と形態を備えた苗のことを指します。苗の健康状態は、将来の作物の健康と収穫に大きな影響を与えます。

以下は、良い苗の特徴です。育苗した苗が以下の状態になるように目指して育てましょう。

  1. 葉色が濃すぎず薄すぎない
  2. 葉が厚くて大きく、広く展開している
  3. 白い多数の根毛が張っている
  4. 節間が均一に生えている(果菜類)

[1]葉色が濃すぎず薄すぎない

葉色が適度な緑色をしている状態は健康的に育っている証拠です。

緑色が薄すぎても、濃すぎてもいけません。

葉が黄色っぽくなってたり、緑色が薄かったりする苗は窒素不足などで栄養が行き渡らなかったか、生育不良を起こして老化してしまった苗です。そうなった場合は土の栄養状態を見直す必要があります。

また、葉の緑色が濃すぎる(暗緑色)のも良くなく、窒素過多や何かしらの病気になっている苗となります。茎や葉が軟弱になり、病虫害にかかりやすくなったら、窒素の過剰を疑いましょう。

それぞれの植物の健康的な葉の状態、色を覚え、それに近づくように育てましょう。

[2]葉が厚くて大きく、広く展開している

葉が薄く、しぼんでいる状態は水不足か光が十分に当たらなかった時に起こります。

十分な水、温度、日射量があれば、葉は厚く、広く展開します。

しぼんだり、枯れたりするときは水の量や温度が高すぎなかったを見直す必要があります。

[3]白い多数の根毛が張っている

植物の種類にもよりますが、元気な根は白く、細い毛のようなもの(毛細根)に覆われています。

白い根が張っている状態は健康的に育っている証拠で、根が黄色または茶色の場合は生育不良や老化が起きています。

根に異常があるときは主にカリウム不足を起こしていることがあります。肥料を入れるなどして土の栄養状態を見直す必要があります。

ポット育苗だとこの白い根が鉢底から少し見えるぐらいがちょうど植え付け適期となります。

[4]徒長せず、節間が均一に生えている(果菜類)

徒長したり、節間が均一になっていなかったりする場合は生育不良を起こしていることがあります。

節が均一に生え、徒長していない苗が良い苗です。

自然界でもすべての植物が均一に生えるわけではなく、元から遺伝子異常がある苗もあります。

節間が均一に生えなかった場合は遺伝子異常があったか、植えた環境に適した水や光、温度がなかったということになります。

遺伝子異常(種の不良)は仕方のないことですが、徒長した場合は光が足りなかったのが原因なので、環境を見直す必要があります。


おわりに

良い苗を育てるためには、日々の管理が適切であるか確認し、修正を行うことが重要です。

窒素過剰や日照不足など、不適切な環境条件下では苗の形態に問題が生じることがあります。適切な管理を行い、良い苗を確保しましょう。

育苗は農業の成功において非常に重要なステップです。適切な育苗方法と管理を行い、健康で頑強な苗を育てることで収穫までしっかりできるようにしましょう。

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