農業の収穫とその後の作業は、作物の品質や新鮮さを確保するために非常に重要です。
今回は、「収穫適期の考え方」、「収穫後の調整」、「予冷と保冷」や「低温障害」について詳しく説明していきます。
適した収穫時期や管理方法
収穫適期は作物の種類や利用部位によって異なります。作物の生育パターンを理解し、各作物にとっての適切な時期に収穫することが重要です。
例えば、キャベツは葉を食用するため、蕾がつくと商品価値がなくなります。収穫期を迎えた作物は、品種ごとに色、形、大きさ、香り、食味などの特徴が異なります。また、出荷先によって品質や大きさなどの規格が異なるため、収穫時期を目的に合わせて見極めることが大切です。
一方で、流通経路によっても収穫時期を調整する必要があります。例えば、トマトやメロンは完熟すると糖度が高まりますが、熱すぎると軟らかくなり、輸送性が下がります。
利用部位に応じて、芽、茎、薬、根などの成長を管理したり、蕾、花、果実、種子などを利用する場合は葉を成長させるのと同時に、花芽を発達させる管理が必要です。特に果菜類では、果実に多くの栄養成分を蓄積させる管理が不可欠となります。
作物の収穫後の手入れと調整
収穫した作物には、出荷や利用目的に応じて調整作業が必要です。
例えば、イネやダイズは収穫後に乾燥・脱穀を行い、サツマイモではキュアリングという作業を行います。キウイフルーツやセイヨウナシなどの果実では追熟が必要であり、野菜の多くは予冷が行われます。
野菜は収穫後も呼吸や蒸散などの生命活動を続けるため、植物内の養分や水分が消費され、品質が低下します。そのため、収穫時の状態を維持することが重要です。
冷却と温度管理:作物の鮮度を守る
作物にはそれぞれ適した貯蔵温度と貯蔵可能日数があります。
一般的に、呼吸量が大きいほど鮮度保持が難しく、表面積の割合が大きいほど貯蔵性が低くなります。水分保持も重要で、水分が5%減少すると野菜の品質が低下すると言われています。
野菜や果物は,収穫後高温下に置かれると、呼吸や蒸散を活発に行って、糖やビタミンなどの成分を消耗したり、しおれたりします。そのため高温期に収穫する野菜や果物は、予冷によって温度を下げてから保冷庫で市場に運び、その間の呼吸や蒸散を抑えて品質の低下を防ぐ必要があります。
予冷は、収穫直後に冷却し、余熱を取り除く操作です。予冷温度は葉菜類には1~5°C、果菜・根菜類には5~10°Cが一般的です。また、保冷は品温上昇を防ぐ処置です。
予冷:事前に商品の温度を安定させることであり、商品などを低温状態で保つ事です。
保冷:商品などを低温状態で保つ事です。
低温状態を保つという点で、「予冷=保冷」という関係になりますが、行うタイミングなどが少し違います。言葉としての違いはそこまで気にする必要はありません。
CA貯蔵
近年では「CA貯蔵(controlled atmosphere storage)」という手法も使われています。
酸素がある状態で保存すると、成熟(追熟)作用のあるエチレンガスの発生や、黄化作用をもたらすクロロフィルの分解が行われ、青果物が劣化していきます。
CA貯蔵法は、低温の冷蔵庫内を「低酸素・高二酸化炭素」の状態に保ち、青果物の呼吸量を大幅に低下させ、エチレンガスの生成やクロロフィルの分解といった作用を抑制するため、冷蔵だけの保存に比べて鮮度維持の期間を長くすることが可能となります。
低温障害
「低温障害」とは適した温度で保存管理しないことで起きる農作物の病気です。
黒ずみなどの変色、食感の変化、変質、味の低下といった症状が出てきます。収穫後の野菜や果物も生きているため適温で保存すること重要になります。
熱帯から亜熱帯起源の作物は、保存期間が長引くと低温障害を起こすことがあります。
例として、夏に採れる野菜のトマト、キュウリ、ナス、ゴーヤなどは低温に弱く、冷蔵庫に長く保存しておくと早く傷み始め、鮮度が落ちたり、糖度が落ち、甘みが失われたりします。
また、南国で育つトロピカルフルーツ、バナナ、パパイヤやマンゴー、他には桃も冷蔵庫で冷やしすぎると同じような症状が出ます。
低温が苦手な野菜や果物もあるため、何でも冷蔵庫に入れることは避けなければなりません。
植物ホルモン「エチレン」
野菜の温度と湿度も重要ですが、注意すべきは植物ホルモンである「エチレン」です。
エチレンが多い野菜とエチレン感受性の高い野菜を一緒に貯蔵すると、感受性の高い野菜の老化スピードが早まってしまうため、分けて保管することが望ましいです。
エチレンガスの生成量が高い:青果物の例
- リンゴ
- メロン
- 西洋梨
- 完熟のトマト
エチレンガスへの感受性が高い:青果物の例
- カリフラワー
- キャベツ
- キュウリ
- バナナ
- 桃
おわりに
農業の収穫と収穫後の作業は、新鮮な作物を提供するための重要なステップです。
鮮度を保って高品質な農産物を確保には、収穫適期の把握と適切な調整、予冷と保冷、低温障害の対策が必要です。野菜や果物の育った環境、種類を考えて収穫や保管の作業をしていきましょう。
関連する本
※参考サイト
出典:保冷・保温ボックス.com「食品小売業界必見!予冷が大切なその訳」
出典:百年環境グループ「CA貯蔵とは?メリットとデメリットを解説」
参照:https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single200.html
出典:農家さんの直送市場「野菜の低温障害とは?」
参照:https://yasai-tuuhan.com/yasai-knowledge/chilling-injury-of-vegetables.html
出典:マイナビ農業「冷蔵庫に入れないほうがいい野菜とは?
参照:https://agri.mynavi.jp/2017_09_25_6164/
出典:NISSHAエフアイエス株式会社「エチレンガスとはなにか?青果物の成長や鮮度への影響も解説」
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