中学校の給食でよく配給される牛乳。そのため親しみがあり、成長を促進するための栄養剤として名高く、家庭でも飲まれることの多い食品です。
しかし、よく噂で「牛乳ではカルシウムは摂れない」と聞きます。
そう聞くと、「小中学校で飲まされた牛乳は何だったの?」って感じですよね。
「いままで飲んできた牛乳に効果はあったのか」、今回は「牛乳でカルシウムは摂れない」という噂の真偽を確かめていきます。
牛乳でカルシウムは摂れるの?
結論「牛乳でカルシウムは摂れる」
牛乳からはカルシウムを摂取できます。小中学校で提供された牛乳はしっかりと効果を発揮します。
「牛乳でカルシウムは摂れない」というのは一般的な誤解に基づいた誤った情報です。むしろ、牛乳はカルシウムを摂るのに適した食品の一つと考えられます。
「牛乳でカルシウムは摂れない」という噂について
なぜ「牛乳でカルシウムは摂れない」という噂が広まったのでしょうか?それは牛乳に含まれるリンの存在が関わっています。
リンは化学式で「P」と表され、一般的にリンはカルシウムの吸収を阻害することで知られています。他の飲料であるコーラもリンを多く含み、「コーラで骨が溶ける」という噂も同様の理由から広まったと言われています。
牛乳100g当たりの成分表
食品群名/食品名: 乳類/<牛乳及び乳製品>/(液状乳類)/普通牛乳 | 値 | 単位 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
廃棄率 | 0 | % | ||||
エネルギー | 61 | kcal | ||||
256 | kJ | |||||
水分 | 87.4 | g | ||||
た ん ぱ く 質 | ||||||
アミノ酸組成によるたんぱく質 | 3.0 | g | ||||
たんぱく質 | 3.3 | g | ||||
脂 質 | ||||||
脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | 3.5 | g | ||||
コレステロール | 12 | mg | ||||
脂質 | 3.8 | g | ||||
炭 水 化 物 | 利 用 可 能 炭 水 化 物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | 4.7 | g | ||
利用可能炭水化物(質量計) | 4.4 | g | ||||
差引き法による利用可能炭水化物 | 5.3 | g | ||||
食物繊維総量 | (0) | g | ||||
糖アルコール | – | g | ||||
炭水化物 | 4.8 | g | ||||
有機酸 | 0.2 | g | ||||
灰分 | 0.7 | g | ||||
無 機 質 | ナトリウム | 41 | mg | |||
カリウム | 150 | mg | ||||
カルシウム | 110 | mg | ||||
マグネシウム | 10 | mg | ||||
リン | 93 | mg | ||||
鉄 | 0 | mg | ||||
亜鉛 | 0.4 | mg | ||||
銅 | 0.01 | mg | ||||
マンガン | Tr | mg | ||||
ヨウ素 | 16 | μg | ||||
セレン | 3 | μg | ||||
クロム | 0 | μg | ||||
モリブデン | 4 | μg | ||||
ビ タ ミ ン | ビ タ ミ ン A | レチノール | 38 | μg | ||
α−カロテン | 0 | μg | ||||
β−カロテン | 6 | μg | ||||
β−クリプトキサンチン | 0 | μg | ||||
β−カロテン当量 | 6 | μg | ||||
レチノール活性当量 | 38 | μg | ||||
ビタミンD | 0.3 | μg | ||||
ビ タ ミ ン E | α−トコフェロール | 0.1 | mg | |||
β−トコフェロール | 0 | mg | ||||
γ−トコフェロール | 0 | mg | ||||
δ−トコフェロール | 0 | mg | ||||
ビタミンK | 2 | μg | ||||
ビタミンB1 | 0.04 | mg | ||||
ビタミンB2 | 0.15 | mg | ||||
ナイアシン | 0.1 | mg | ||||
ナイアシン当量 | 0.9 | mg | ||||
ビタミンB6 | 0.03 | mg | ||||
ビタミンB12 | 0.3 | μg | ||||
葉酸 | 5 | μg | ||||
パントテン酸 | 0.55 | mg | ||||
ビオチン | 1.8 | μg | ||||
ビタミンC | 1 | mg | ||||
アルコール | – | g | ||||
食塩相当量 | 0.1 | g |
以上の表(日本栄養成分表2020)を見ると、牛乳100g当たりカルシウム110mg、リン93mgです。比率としてはカルシウム1に対し、リンは約0.8となり、牛乳にはリンがカルシウムとほぼ同量含まれていることとなります。よって牛乳にはカルシウムの吸収を妨げるリンが多く含まれることとなるため牛乳ではカルシウムがとれないのではないかと考えられがちです。
しかし、カルシウムとリンは体内で相互作用を持ち、適切なバランスが保たれることで健康な骨や歯の形成が行われます。
体内のリンはその85%がカルシウムやマグネシウムとともに骨や歯をつくる成分になっていて、残りの15%は筋肉、脳、神経などの様々な組織に含まれ、エネルギーをつくり出す時に必須の役割をしています。
リン | ミネラル(無機質) | 栄養成分のはたらきを見る – Glicoより
もちろんリンのカルシウムの吸収を阻害する作用はあるためリンの摂取量が過剰になると、カルシウムとのバランスが崩れ、骨量や骨密度が減る可能性があるといわれています。しかし、典型的な食生活ではリンの過剰摂取はあまり起こりません。
リンの過剰摂取の多くは外食や加工食品、サプリメントの常用など偏った食生活をしている場合です。
リンは、現代の食生活では一般に不足することはなく、むしろとり過ぎが問題です。その原因のひとつに、リンを多く含む食品添加物が加工食品や清涼飲料水などの酸味の素として使用されていることがあげられています。(中略)
外食や加工食品に偏りがちな場合は、リンの摂取量が多い可能性があります。食生活を見直すとともにカルシウムの多い食品を摂取するようこころがけましょう。
リン | ミネラル(無機質) | 栄養成分のはたらきを見る – Glicoより
リンは、ハムやベーコン、練り物、プロセスチーズ、インスタント麺、缶詰、ファストフードなどの加工食品に食品添加物として使われています。インスタントラーメンを毎日食べているといった食生活ではリンの過剰摂取になってしまう可能性があります。栄養面、食のリスクの分散という面においてそういった場合は見直す必要があります。
驚愕の事実!カルシウムを含む食品には大体リンが含まれている
牛乳及び乳製品には、カルシウム1に対してリンは0.8含まれていおり、カルシウムとほとんど同量のリンが含まれています。
しかし、牛乳以外でカルシウムを多く含む他の食品(骨付き魚、小魚、干物など)にも、カルシウムとほぼ同量のリンが含まれています。例えば、小魚100g当たりの成分表(日本栄養成分表2020)を見ると、カルシウム1に対しリンが0.7という比率です。
小魚100g当たりの成分表
食品群名/食品名: 魚介類/<魚類>/(いわし類)/かたくちいわし/煮干し | 値 | 単位 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
廃棄率 | 0 | % | ||||
エネルギー | 298 | kcal | ||||
1264 | kJ | |||||
水分 | 15.7 | g | ||||
た ん ぱ く 質 | ||||||
アミノ酸組成によるたんぱく質 | (54.1) | g | ||||
たんぱく質 | 64.5 | g | ||||
脂 質 | ||||||
脂肪酸のトリアシルグリセロール当量 | 2.8 | g | ||||
コレステロール | 550 | mg | ||||
脂質 | 6.2 | g | ||||
炭 水 化 物 | 利 用 可 能 炭 水 化 物 | 利用可能炭水化物(単糖当量) | (0.3) | g | ||
利用可能炭水化物(質量計) | (0.3) | g | ||||
差引き法による利用可能炭水化物 | 14.0 | g | ||||
食物繊維総量 | (0) | g | ||||
糖アルコール | – | g | ||||
炭水化物 | 0.3 | g | ||||
有機酸 | – | g | ||||
灰分 | 13.3 | g | ||||
無 機 質 | ナトリウム | 1700 | mg | |||
カリウム | 1200 | mg | ||||
カルシウム | 2200 | mg | ||||
マグネシウム | 230 | mg | ||||
リン | 1500 | mg | ||||
鉄 | 18.0 | mg | ||||
亜鉛 | 7.2 | mg | ||||
銅 | 0.39 | mg | ||||
マンガン | – | mg | ||||
ヨウ素 | – | μg | ||||
セレン | – | μg | ||||
クロム | – | μg | ||||
モリブデン | – | μg | ||||
ビ タ ミ ン | ビ タ ミ ン A | レチノール | Tr | μg | ||
α−カロテン | (0) | μg | ||||
β−カロテン | (0) | μg | ||||
β−クリプトキサンチン | (0) | μg | ||||
β−カロテン当量 | (0) | μg | ||||
レチノール活性当量 | (Tr) | μg | ||||
ビタミンD | 18.0 | μg | ||||
ビ タ ミ ン E | α−トコフェロール | 0.9 | mg | |||
β−トコフェロール | 0 | mg | ||||
γ−トコフェロール | 0.1 | mg | ||||
δ−トコフェロール | 0.1 | mg | ||||
ビタミンK | (0) | μg | ||||
ビタミンB1 | 0.10 | mg | ||||
ビタミンB2 | 0.10 | mg | ||||
ナイアシン | 17.0 | mg | ||||
ナイアシン当量 | (28.0) | mg | ||||
ビタミンB6 | 0.28 | mg | ||||
ビタミンB12 | 41.0 | μg | ||||
葉酸 | 74 | μg | ||||
パントテン酸 | 1.81 | mg | ||||
ビオチン | – | μg | ||||
ビタミンC | (0) | mg | ||||
アルコール | – | g | ||||
食塩相当量 | 4.3 | g |
以上のことから乳製品以外のカルシウムが摂れるといわれる食品にもリンが多く含まれていることがわかります。
リンの作用、成分表の量だけを見てしまうと不安になってしまうこともありますが、その情報より大事なのはカルシウムとリンの比率です。
「カルシウムとリン」の理想的なバランス
一般的に、理想的なカルシウム対リンの比率は1:1から2:1の間であると考えられています。
健康な成人の場合、1:1.2から1:1.5程度の割合が推奨されています。このバランスは骨の健康を維持するために重要です。
このことからカルシウムがよくとれるといわれる小魚、干物、牛乳はカルシウムとリンの比率が1:1でバランスが良いことがわかります。そのため一般的にカルシウムをとるのにおすすめされる食品として挙げられることが多いです。
リン以外の要素
いままでリンの話をしてきましたが、カルシウムを効率よく摂取するためには他の成分についても考慮する必要があります。
それはカルシウムの吸収を促進する成分です。リンのような吸収を阻害するものがある一方で吸収を助けてくれるものがあります。例えば以下に述べるタンパク質、ビタミンD、マグネシウム、ビタミンKはカルシウムの吸収の手助けをしてくれます。
- ビタミンD: カルシウムの吸収を増加させるのに非常に重要です。ビタミンDは腸管でのカルシウムの吸収を増進し、骨の健康をサポートします。
- タンパク質: カルシウムは、タンパク質との結びつきによって吸収されやすくなります。食事中に十分なタンパク質を摂取することは、カルシウムの吸収を助けます。
- マグネシウム: カルシウムの代謝や骨の健康に重要な役割を果たすマグネシウムは、カルシウムの吸収をサポートするとされています。
- ビタミンK: 骨の健康に関与し、カルシウムが適切に骨に定着するのを助けることが知られています。
基本的に高タンパクの食品にはリンが多く含まれています。しかし、タンパク質によってカルシウムの吸収が促されています。一つの成分の悪い面だけを見ずに、食品全体の栄養を見る必要があります。
またカルシウムの過剰摂取についても注意が必要です。カルシウムの過剰摂取は動脈硬化を引き起こす可能性があります。高血圧や心疾患を患っている場合は、カルシウムサプリメントの摂取を控えることが推奨されています。なんでも個々の状況によって必要な栄養素量は異なるため、医師や栄養士に相談することが重要です。
牛乳を飲もう!
カルシウムは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜類や海藻などに多く含まれます。なかでも、牛乳や乳製品は、他の食品に比べてカルシウムの吸収率が高いうえに、1回の摂取量も多いので、効率よくカルシウムがとれます。
大切な栄養素カルシウム – 農林水産省より
牛乳はカルシウムを摂るのに適した食品です。 牛乳はカルシウムとリンがバランスよく含まれており、またカルシウムの吸収を手助けしてくれるタンパク質やビタミンDも含むため、健康な骨や歯の形成をサポートします。カルシウムは骨粗しょう症にならないためにも大人になってからも必要な栄養素です。子供のときはよく飲んだけど大人になってから飲まなくなってしまったという方は積極的にとっていきましょう。
\おいしく、手軽にカルシウム!/
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