農業において、良い収穫を得るためには健康で丈夫な植物を育てることが不可欠です。
そのために重要な役割を果たすのが「育苗」です。
今回は、育苗の重要性とそのメリットについて詳しく説明します。
育苗とは?
「育苗」とは、畑や圃場ではなく、別の場所で種から苗を育てる方法です。
種を育苗ポットや他の容器にまいて、一定の条件下で育てます。これにより、自然の気象条件から植物を保護し、丈夫で健康な苗を作ることが可能となります。
種を直接畑にまくと、干ばつや豪雨によって発芽しにくくなったり、鳥害の被害にあったりするなど、リスクが高まり、これらを防ぐにしても広い畑では管理が大変です。
育苗は、限られた空間で一括管理できることで、少ない労力でも自然環境から苗を守ることができるので、管理の手間が少なくなります。
育苗するメリット
育苗によって育てられた丈夫な苗は、以下の点で多くの利点があります。
- 移植時の活着率が高まる
- 気象条件への耐性が高まる
- 草勢と着花が安定
- 個体差を排除
- 管理の手間が減少
- 効率的な土地利用
[1]移植時の活着率が高まる
育苗は植物の成長を一定の条件下でコントロールできるため、移植時に苗がよりスムーズに根付きます。これにより、収穫後の品質と収量が向上します。
移植する前にある程度大きく育てておくことで、雑草よりも生育が早くなり、草に負けにくくなります。
[2]気象条件への耐性が高まる
育苗環境は外部の気象条件から植物を保護するため、雨風や急激な気温変化などに対する耐性が高まります。これにより、異常気象にも柔軟に対応できます。
また一括して温度管理もすると、本来は発芽しにくいような季節でも苗がつくれます。
[3]草勢と着花の安定
果菜類などでは、苗期に花芽分化が始まります。育苗によって適切な成長環境を提供することで、草勢と着花が安定し、収穫の一貫性が確保されます。
またトマトなどは育苗した苗を圃場に植えることで花の向きを揃えて植えることができ、実が同じ向きに実るように調整できるため収穫作業を楽にすることができます。
[4]個体差を排除
種には個体差があり、発芽率や成長率が異なるためすべての種が発芽するわけではなく、発芽したものがすべて健全に育つとは限りません。
育苗をすることで、素性の良い種子から育った苗のみを選別して畑に植え付けることができます。
選別された良い苗を使用することで一貫性のある収穫が可能となります。
[5]管理の手間を少なくする
育苗環境での管理は、野外の畑での管理よりもコントロールしやすいため、管理の手間が減少します。
発芽するまでに生える雑草を除草するなどの無駄な作業をなくすとともに安定して発芽を迎えることができます。
種の状態で圃場に植えた場合、植物は発芽するまではとても貧弱のため、すでに何年かにわたって耐性や生命力が強くなっている雑草に負けてしまいます。
雑草にはアレロパシー(他感作用)という他の植物を弱らせる動きがあるので、しっかり育てきった丈夫な苗でないと圃場に植えてもうまく育たないことがあります。
[6]効率的な土地利用
育苗を別の場所で行うため、畑で他の作物を育てることができます。これにより、限られた土地を効率的に利用できます。
夏野菜を育てながら秋冬野菜の育苗をしていくなどをして一年のサイクル、設計を考えて作業することで作業効率や経済的な見直しをすることができます。
また育苗した苗は売ることができるので、もし圃場の環境が整っていない状態だった場合は収穫物ではなく、苗を売ることで利益を生むことができます。
おわりに
育苗は、農業において高い生産性と品質を実現するための重要なステップです。植物の丈夫さや一貫性を確保し、畑での生育を安定させるために、育苗を始めてみましょう。
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